石庭で有名な龍安寺の方丈に、南画家の皐月鶴翁が描いた襖絵があります。
襖絵の題材に使われた龍と金剛山。
龍安寺が臨済宗妙心寺派の寺院であることを思うと、襖絵に龍が描かれていることは納得がいきます。しかしながら、なぜ北朝鮮にそびえる金剛山が描かれているのでしょうか。
皐月鶴翁の筆による龍図。
龍安寺参拝と同じ日に、狩野探幽の「八方にらみの龍」で知られる妙心寺も訪れてみました。禅寺に龍はよく似合います。龍安寺の襖絵に描かれた龍にも、他の禅寺で拝観する龍と同じような勢いが感じられます。
こちらが金剛山でしょうか。
実は作者の皐月鶴翁は、十八回にも渡って金剛山へ足を運んでいます。金剛山への憧憬が、襖絵に金剛山を描く動機になっていたものと思われます。
京都生まれの皐月鶴翁ですが、北朝鮮の金剛山から何かメッセージを感じ取っていたのかもしれません。
方丈は龍安寺石庭の前にあります。
参拝客は方丈を背にして石庭に見入ります。普段は石庭に目を奪われがちで、方丈の中の襖絵にまで目が行かない人も多いものと思われますが、視点を変えると新たな発見を楽しむことができるかもしれません。
方丈の中へ入ることはできませんので、回廊と座敷の間に低い衝立のようなものが立てられていました。間仕切りの手前から襖絵を鑑賞することになります。
龍安寺の方丈は、1700年代後半に火災による焼失の憂き目に遭っています。その後、塔頭の西源院の方丈を移築して現在に至ります。美味しい湯豆腐のお店で知られる西源院ですね。方丈を拝観した後、鏡容池の周りを巡るように帰路に着くわけですが、その途中に西源院の脇を通ることになります。
龍安寺方丈。
私が龍安寺を訪れた時も、数多くの外国人観光客の方々とすれ違いました。
欧米人の観光客が、東洋的思想に裏打ちされた龍安寺の石庭に見入ります。その静かな姿を見ながら、私たち日本人も静かな時間を楽しみます。龍安寺の方丈前には、全ての価値観をつなぐ輪のような物が垣間見えます。
龍の足の向こうに金剛山の絵が見えます。
世界から孤立する北朝鮮の現状を思うと、皐月鶴翁の描いた金剛山にも違った意味が加味されていくのを感じます。何かを鷲づかみにしようとする龍の足。そこには、あらゆる願い事を叶えてくれると言われる如意宝珠がよく似合います。宝の珠を鷲づかみにした龍が、急峻な金剛山を超えて行こうとしている。そんなイメージが頭の中に湧いてくるのを覚えました。
金剛山の襖絵には、何か文字が書かれていますね。
金剛山への賛辞でしょうか?
残念ながら襖絵に関する案内板が見当たりませんでしたので、詳細に関しては不明です。
龍安寺の池泉回遊式庭園を通って、拝観受付のある山門へと戻ります。
同じ禅寺である建仁寺の襖絵にも感銘を受けましたが、まだ新しいとは言え、龍安寺の襖絵にも一見の価値があります。
龍安寺の拝観料は500円。
アクセスは市バス龍安寺前下車すぐとなっています。私は今回、京都市街の散策も楽しみたいと思い、JR円町駅から龍安寺まで徒歩で歩いたのですが、純粋に龍安寺参拝を旅の目的にされている方には、市バスでのアクセスをおすすめ致します。