和泉式部のお墓があることで有名な誠心院(じょうしんいん)。
新京極の繁華街の中にあるため、京都らしい風情とはまた違った喧噪の中に佇んでいます。
不思議なもので、通りから一歩誠心院の中に足を踏み入れると、そこにはまた違った世界が広がります。
平安時代の歌人、和泉式部。
美人で知られる和泉式部は、数々の恋愛遍歴をその歌に託してきました。
和泉式部の宝筐印塔(ほうきょういんとう)。
この石塔は1313年(政和2年)に改修建立されたものです。
高さはおよそ4m、幅2.4mにも及びます。
和泉式部といえば、敦道親王との恋愛沙汰を記した「和泉式部日記」が有名です。
今はメールで恋のやりとりをする時代です。
現代にも通じる和泉式部の恋愛術は、若い人の間でも人気を呼んでいるようです。
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恋愛歌人としての評価は、この和泉式部日記によって確立されたものと思われます。
いつの時代も、人は恋に悩みます・・・。
恋愛の指南書としてもご利用頂けるのではないでしょうか。
入口の所にあった鈴成り輪。
お願いをしながら回します・・・。
お墓のそばに和泉式部の案内書がありました。
有名な歌も記されていますね。
幾多の男性遍歴を繰り返しながら派手な生活を送っていた和泉式部ですが、彼女にも老いはやって来ます。
これからどう生きていけば良いのか、思い悩んだ和泉式部は書写山の性空上人のもとへ相談に行くことになりました。
和泉式部一行は夕方に到着しますが、あまりの美しさに鬼の化身だと思われ、誰ひとり和泉式部を迎える者はいなかったと伝えられます。その時に詠んだ、うら寂しい一句・・・
くらきより くらきみちにぞ 入りぬべき はるかにてらせ 山のはの月
暗い現世を経て、さらに暗い冥界へと入っていくのだろうか。山の端よ、ひと筋の光をさしておくれ。
そんな意味になります。
心を動かされた性空上人は、八幡の大菩薩に祈りを捧げなさいと和泉式部を諭します。諭された通りに八幡に行くと、都の誓願寺の阿弥陀如来にすがりなさいと教えられます。
和泉式部は教えに従い、誓願寺の傍らの御堂に住んで、やがて極楽往生を遂げるに至ります。
若い頃の奔放な生活から、晩年は打って変わってひっそりと暮らしていたであろう和泉式部。そんな式部の悲哀にも似た感情が、誠心院から伝わって参ります。